放送局各位
アイフルのテレビCM中止申入書
(2回目)
平成18年2月10日
アイフル被害対策全国会議
代 表 弁護士 河 野 聡
事務局長 弁護士 辰 巳 裕 規
申入れの趣旨
全時間帯を通じ、アイフル株式会社(以下、「アイフル」という)のテレビCM放送を直ちに中止することを申し入れる。
申入れの理由
【はじめに】
当会議は,消費者金融大手のアイフルによる被害が全国各地で発生していることを懸念する,全国クレジット・サラ金問題対策協議会(代表幹事 甲斐道太郎,事務局長 弁護士木村達也)所属の弁護士・司法書士・被害者の会が中心となって結成された団体である。
アイフルは、東証及び大証1部に上場する貸金業を営む株式会社であり、新規顧客獲得数においては業界トップとなっている。
【第1回目の申入れ後の対応】
当会議は、平成17年9月に各放送局に対し、今回の申入れと同様の申しれを行った。
この昨年の申入れにおいて、当会議は、アイフルの業務の違法実態につき資料を提示のうえ説明し、さらにアイフルのテレビCMにおけるイメージ戦略の拡大路線を指摘した上で、各放送局において、利息制限法に違反している事実を何ら表示しないアイフルのテレビCM放送を継続することが、社会に対しいかに重大な悪影響を及ぼし、また放送倫理に悖ることであるかを指摘したところである。
しかしながら、現在までのところ、各放送局においてアイフルのテレビCM放送を中止した、あるいは一時的に停止したところはない。
それどころか、国際柔道、女子駅伝、フィギュアスケートなどの各種スポーツ大会においては、アイフルの看板などが一切の映像処理を施されることなく放映され、CMの時間帯にはアイフルのCMが洪水のように流されるといった、まさにアイフルの宣伝広告一色といえる有様であった。このような事態に鑑みれば、各放送局は、当会議の申入れを何らの検討することなく、黙殺したものと言わざるを得ない。
【日本民間放送連盟の放送倫理及び放送基準】
昨年の申入れの際、当会議は、各放送局に対し「貴局のサラ金業者のCMに対する取り組み」などについて質問したところ、各放送局は異口同音に民放連の放送基準に則って行っている旨の回答をしている。
なるほど,そこには,「法と秩序を守り、基本的人権を尊重し、国民の知る権利に応え」,「児童・青少年および家庭に与える影響を考慮して」,「事実を客観的かつ正確、公平に伝え」,「民間放送の場合は,広告の内容が、真実を伝え、視聴者に役立つものであるように細心の注意をはらい」,「法と秩序を尊重する」,という放送における崇高な理念が掲げられ,さらに,放送基準においては,より具体的な放送のあり方が規定されている。
もし,これらの倫理や基準を素直に読み取るならば,アイフルのテレビCMは,「関係法令などに反し」,「健全な社会生活を害し」,「視聴者に錯誤を起こさせるような表現を用い」,「業者の実態・サービス内容が視聴者の利益に反し」,「安易な借入を助長する表現であって,特に、青少年への影響を考慮せず」,放送倫理・放送基準に著しく反しているといえる。
後に述べるように、最高裁判所は、貸金業の規制等に関する法律(以下、「規制法」という)第43条のいわゆる「みなし弁済規定」を実質上死文化させる判断を行った。これにより、アイフルをはじめサラ金各社のテレビCMで表示される貸付の実質年率は、明確に利息制限法に違反する表示となったのである。
破産予備軍が200万人から存在しているとされる現状において、この司法判断は極めて社会的意義の大きいものであるが、貴局の報道番組において、一連の最高裁判決が取り扱われていないとすれば、それは国民の知る権利に応える姿勢とは到底いえない。それどころか、サラ金のテレビCMが従前のまま、何らの注意文もなく放送し続けられることで、本来支払う必要のない違法な利息が,あたかも,「約定利息こそが支払うべき利息である」という誤解を一般視聴者に与え,大きな不利益をもたらしているのである。そして,一度もたらされた不利益は,一般人にとってそう容易く回復できるものではない。
さらにいえば、アイフルなどがスポンサーとなる番組はCM放送を自主規制する時間帯以外にも数多くあり、これら番組も、多くの児童・青少年が視聴することからすれば、彼らに対する悪影響も計り知れない。
放送各社のこういった姿勢が,サラ金各社に,基本的に守られるべき国民の権利を踏みにじり,法令を遵守することよりも自社の暴利のみを追求する破壊的営業を堂々と継続させる温床となっていることにお気づきであろうか。
この事態を、貴局はどのように考えるのであろうか。
【最高裁判所判決】
最高裁判所は、サラ金業者に対し、昨年末から相次いでその高利の収奪が利息制限法に違反する旨を指摘する判決を行なった。
- 平成17年12月15日、サラ金業者からの借金をリボ払いで返済している場合、規制法第43条(みなし弁済)の適用要件を欠くと判断をした。この司法判断により、サラ金業者が、リボ払いの返済方法をとる貸付を行う場合には、利息制限法所定以上の金利を取得することは違法であることが明確になった。
- 平成18年1月13日、アイフルの子会社たるシティズに対して、貸付契約書中に「元金又は利息の支払いを遅滞したときには、当然に期限の利益を失い、債務者に対して直ちに元利金を一時に支払う(期限の利益喪失特約)」という条項がある場合、債務者は利息制限法の上限を超える利息の支払いを、事実上強制されて支払うことになるのであるから、規制法第43条(みなし弁済)の適用要件である「支払いの任意性」を欠くと判断をした。この司法判断により、サラ金業者の契約書中に、期限の利益喪失特約がある場合には、利息制限法所定以上の金利を取得することは違法であることが明確になった。そして、現在全てのサラ金業者の契約書には、この特約があると思われることから、利息制限法所定以上の金利を取得することができるサラ金業者は皆無となったのである。そして、これらの事実を広告において明確に表示せず、従前のままの高利の約定利率を掲げるのみでは、視聴者に誤解を与える違法・不当な表示であることが明確になった。
- 平成18年1月19日、同じくアイフルの子会社たるシティズに対して、上記と同様の判断がなされたが、さらに規制法第43条(みなし弁済)の適用要件である「支払いの任意性」について、より明確性を求める具体的な判断基準を打ち出した。
- 平成18年1月24日、規制法第43条(みなし弁済)の適用要件を厳格に判断することを確認した。
以上の、貸金業者に対する最高裁判所の一連の判断は、貸金業者の利息制限法に違反する高利の収奪を断固として許さないとする、司法の毅然とした態度の表れであるといえる。
【過払金返還の実情】
当会議が、アイフルに対し、昨年7月に行った過払金の返還を求める一斉提訴では、和解を含め解決した全ての事案で過払金の返還がなされ、その額は1億3,000万円を超えるものとなっている。このことは、アイフル自らが、テレビCMで表示されている高利の約定利率が、利息制限法に違反するものであることを認めていることの証左である。
【まとめ】
前回の申入れの際にも指摘したが、サラ金からの借金は、そのあまりの高利のために必然的に多重債務者を生み出し、返済が滞った者への容赦のない取立から破産者はもちろん、自殺者や強盗などの凶悪犯を生み出す根源となっているのである。そして、テレビCMのソフトなイメージが、サラ金から借金をする要因の大きなウエートを占めていることは間違いのないところであることからすると、貴局が、依然として利息制限法に違反する高利の約定利率を掲げる、サラ金業者のテレビCMを放送し続けることは、社会に対し害毒を流し続けることにほかならない。また、そのことは一連の司法判断を無視するものであるばかりか、視聴者に重大な誤解を生じさせるものであり、一般市民の放送局に対する信頼を裏切り、国民の知る権利をも封殺する行為となるのである。
以上のことに鑑みれば、サラ金の中でも特に、東証1部・大証1部に上場し、業界トップを走るアイフルのテレビCM放送を中止することは、極めて社会的意義の大きいものといえる。また、一連の司法判断のうち、平成18年1月13日と平成18年1月19日の判決は、いずれもアイフルのグループ会社につき直接判断されたものである。その意味からも、貴局は、アイフルのテレビCMを、直ちに中止するべきである。また、仮に直ちに中止できないとしても、「約定利率が利息制限法に違反していること、利息制限法を越える利息の支払い義務はないこと」を,CMにおいて明記することを義務づけ,これに応じない場合にはCM放送を一時停止するとともに、登校前の朝の番組や下校後の番組、午後9時以降にも青少年向け番組が数多くあることから、児童・青少年に対する影響に鑑み、放送自主規制の時間帯を拡大するべきである。
以上