2006年2月13日
金 融 庁 御中
アイフル被害対策全国会議
代 表 弁護士 河野 聡
事務局 弁護士 辰巳 裕規
神戸市中央区東川崎町1−3−3
神戸ハーバーランドセンタービル10階
神戸合同法律事務所内
TEL 078-371-0171/Fax 078-371-0175
URL:http://www.i-less.net
私たちは,過剰なテレビCM・借主や保証人の生活基盤を奪う高利不動産担保ローン・執拗な取立による被害・取引履歴の開示や過払金の返還などについて問題点が多い,消費者金融最大手の一つアイフル株式会社による被害の救済のために全国の弁護士・司法書士・被害者の会が結集した全国組織です。
私たちは,貴庁が先般公表された貸金業規制法施行規則改正について、次のとおり意見を述べます。
記
1.改正の契機となった最高裁判決について
既に御承知のとおり、最高裁は平成18年1月13日及び19日に、アイフル子会社商工ローン「シティズ」の貸付について、貸金業法43条の「みなし弁済」規定の適用を否定する判決を言い渡しました。
このうち13日判決は、利息制限法を超える約定金利の支払いを滞った場合には、期限の利益を喪失し残額に遅延損害金を付して一括で支払う旨の「期限の利益喪失特約」のもとでの支払は「事実上の強制」であり貸金業法43条の「任意性」の要件を欠くこと、及び、貸金業法施行規則15条2項は、貸金業法18条1項の委任の範囲を超え違法無効であることを判示しました。また、19日判決では、やはり上記「期限の利益喪失特約」のもとでの支払には任意性が認められないと判示しました。
2.施行規則15条2項の削除については賛成する。
貴庁が、上記判決を受けて早急に施行規則15条2項の削除を打ち出したことは、大変評価できます。法が要求する記載事項である「契約年月日」は債務者に貸金業者との取引の期初を把握させ、取引履歴の全面開示・利息制限法に基づく法定充当再計算を実現する上でも極めて重要な情報ですから、これを受取証書に明示させることは債務者保護に資するものです。
3.施行規則13条1項1号ヌ「期限の利益喪失特約」の記載について
(1)改正案
貴庁は、いわゆる17条書面の記載事項として現行施行規則13条1項1号ヌが定める「期限の利益の喪失の定めがあるときは、その旨及びその内容」との記載に、同規定が「利息制限法1条1項に規定する利率を超えない範囲においてのみ効力を有する旨」の記載を付加することを求めています。上記最高裁判決が、利息制限法制限利息を超える約定利息の支払い遅滞を期限の利益喪失事由とする特約については、制限利息超過に関わる部分については無効であるとの判断を示したことに対応したものと思われます。
(2)改正案ではなお不十分である。
かかる改正案自体は、有効性について疑義のある特約について法律上の効力を明らかにする機能が認めうることから評価しうる面もございます。また、これまで規則においては利息制限法の適用に関する規定が存しなかったことに鑑みれば、利用者保護の見地から一歩前進をしたとの評価をすることもできます。 しかしながら、この記載事項の変更だけの改正ではおよそ借主に契約内容を理解できるように明らかにしたとは言えませんので、後述のとおり、他の記載事項についても同時に改正をすべきです。また、単に契約書上の文言を変更するだけではなく、契約時に契約内容を借主に理解できるように説明を尽くす義務を貸金業者に貸すこと(利息制限法超過利息を支払う法的義務は存せず、制限利息さえ支払えば何らの不利益を被ることがないことを債務者に十分理解させること)、返済時に債務者が利息制限法制限金利のみを何等の不利益・負担を被ることなく、自由かつ容易に支払うことができる環境を整備すること(例えばATMによる返済であれば画面上に利息制限法制限利息が分かりやすく表示され、利息制限法制限利息のみを返済するという選択が容易にできるようにすることなど)が必要であると考えます。
(3)最高裁平成18年1月19日判決の再確認
最高裁平成18年1月19日判決は、同月13日判決よりも任意性の要件について更に踏み込んで判断をしています。すなわち、まず任意性の要件についても「(任意性が)明確に認められることが必要」と判示し、貸金業法43条の他の要件同様、厳格解釈・制限解釈がなされることを再確認しました。その上で、「法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」とは・・・事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には、制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはできず、法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである」として同月13日判決と同一の判断を示しつつ更に「そして、債務者が制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったか否かは、金銭消費貸借契約証書や貸付契約説明書の文言、契約締結及び督促の際の貸金業者の債務者に対する説明内容などの具体的な事情に基づき、総合的に判断されるべきである」として、単に契約書上の文言だけでなく「契約締結及び督促の際の貸金業者の債務者に対する説明内容」も考慮されると判示されました。かかる判示部分は、貸金業者の説明責任・情報提供義務を認めるものと評価してよいと考えます。つまり、如何に契約文言の記載だけを改めても、債務者が理解できるまで分かりやすく説明をしなければおよそ任意性は確保されないのです。今般の規則改正は、かかる最高裁判決を踏まえて行われるものですから、最高裁判決の債務者保護の精神を酌むものでなければなりません。
(4)当対策会議が考える規則改正案
そもそも当対策会議では、出資法の上限金利は債務者・保証人の生活破壊・事業破壊を招く高金利であり、少なくとも利息制限法制限金利まで即刻引き下げることが多重債務被害・高金利被害を減少させる最善策であると考えております。したがって規則の改正のみでは抜本的な解決とはおよそならないと考えているものですが、あえて当面の対処として規則を改正する場合には、貴庁の改正案に加えて下記の規則改正を同時に行うべきと考えます。
(i) 利息制限法制限利率の明示
貴庁の改正案を債務者が理解するためには、利息制限法制限利率が一体どの程度であるのかを知る必要があります。かかる要請は、「法の不知」の次元の問題ではなく、事業者の情報提供義務(消費者基本法・消費者契約法3条参照)に由来するものですから、記載事項として不可欠になります。
(ii) 利息制限法制限利率による利息の計算方法の明示
貴庁の改正案を債務者が理解するためには、施行規則14条1項1号ヘの「利息の計算方法」の記載に「利息制限法制限利率による場合の計算方法」を併記することが必要です。かかる記載がなければ、特約のうちどの部分が無効か判断が容易につかないからです。
(iii) 利息制限法制限利率による支払をする場合の各回の返済金額の明示
施行規則14条1項1号チの「各回の・・・返済金額」の記載には、利息制限法制限利率による支払をする場合の「各回の」「返済金額」を併記する必要があります。かかる記載がなければ、制限利率による支払をしようとする債務者は、各回の返済金額を知ることが困難だからです。
(iv) 契約条項を読みやすい文字とすること
貴庁改正案そしてかかる改正を実効化なさしめるために最低限不可欠な上記(i)〜(iii)の記載をするとしても、細かい不動文字で記載されていれば債務者はこれを判読することは困難です。期限の利益喪失特約あるいは利息に関する事項は債務者にとって極めて重要な約束であることから、その記載事項は少なくとも12ポイントで記載し、かつ、赤字で記載させるべきです。
(v) 利息制限法による支払を容易にする環境整備をすべきこと
契約時あるいは返済時には、貸金業者窓口あるいは設置するATMにおいて、「利息制限法を超える約定は超過部分について無効であること」「利息制限法を超える利息は支払う義務が存しないこと」「利息制限法制限利息さえ支払えば一切の不利益が存しないこと」「利息制限法制限利率による場合の返済金額」を説明する義務を定め、債務者が制限利率による返済を自由に選択できる環境を整備する旨を義務づけるべきです。これは上記最高裁判決に沿うものです。
(vi) 期限の利益の「当然」喪失特約の禁止
貸金業者のほとんどは一度でも支払日における返済が1回でも滞った場合には催告無しに当然に期限の利益を喪失すると定めています。しかし、数年にも及ぶ長期取引においては、意図的ではなくとも、また、返済能力に支障が生じたわけではなくとも、支払日を失念してしまうこと、返済金額を誤ってしまうことは当然起こり得ます。わずかな支払の遅滞や不足をもって当然に遅滞に陥るとすることは債務者にとってあまりに過酷な結果となります。また、貸金業者が利息制限法を潜脱するために、同特約を濫用し遅延損害金名目で高利を徴求し続ける可能性も大いにあります。債務者も期限の利益を喪失したか否か判断がつかず、遅滞状態にあることを認識せずに、「利息」と「遅延損害金」を混同して返済を継続してしまう危険もあります。
「期限の利益」は債務者にとって極めて重要な権利ですから、その権利を喪失(=期限の利益約定の解除)させるためには、民法の原則通り、「催告」「相当期間の経過」「解除の意思表示」を要求すべきです(なお金銭消費貸借契約が長期間におよぶ継続的契約として行われていることに鑑みれば、賃貸借契約と同様にわずかな返済期日の徒過・不足だけでは期限の利益は喪わず、信頼関係破壊に至る特段の事情がある場合に初めて期限の利益を喪失すると解すべきです)。
以上少なくとも(i)〜(vi)の改正が同時になされてはじめて貴庁改正案は利用者保護・契約関係の明確化のために実効的なものとなると考えます。形式的に契約書記載文言の付加を求めるだけでは、およそ任意性が確保されない状況に代わりはないし、記載事項としてもなお明確性を欠くものとなると考えます。よろしく御検討ください。
以 上