アイフル被害対策全国会議

金融庁 御中

「おまとめローン」の適正化に向けた法改正を求める提言書

2006年5月24日

アイフル被害対策全国会議
代 表 弁護士 河野  聡
事務局 弁護士 辰巳 裕規
神戸市中央区東川崎町1−3−3
神戸ハーバーランドセンタービル10階
神戸合同法律事務所内
TEL078-371-0171/Fax078-371-0175
URL:http://www.i-less.net

第1 提言の趣旨

 1 貸金業者は、利用者の収入、職業、家族構成、他の債務、その他の状況から総合的に判断される支払能力を考慮することなく、不動産等の担保にのみ依拠して消費者に対して過剰与信を行ってはならないこと

 2 前項の実効性を確保するため、融資限度額について規制を設けること

 3 貸金業者が、他の利息制限法を超過する利息等が付された債務を精算する目的で融資を行う場合には、貸金業者に対し、当該債務を利息制限法に基づいて元本充当計算ができることの説明を義務付け、利用者の利益を最大限に尊重する措置を講ずること

 4 前項の融資の際には、利用者に対し、既存債務の借入先、返済日及び返済額を記載した書面並びに利息制限法に基づく元本充当計算書の交付を義務づけること

 5 その他、先進諸国における過剰貸付規制を導入すること

 6 過剰与信違反に対する民事効並びに刑事罰の規定を立法化すること

 以上に関し、法改正を求める。

第2 提言の理由

1 おまとめローンの蔓延

 おまとめローンとは、広義では、無担保信用の顧客が借入額、借入件数ともに増加して多重債務になった際に、既存債務を一本化する融資をいい、狭義では、既存債務を利息制限法に引き直しをすれば、残債務が0やかなり低額になって任意整理ができる案件であっても、利息制限法に引き直しをしないまま、その既存債務をまとめて融資し、本人や親族の不動産に根抵当権等を設定させることによって、多額の融資を行う融資をいうこととする。

 以下、特に断りなき限り、狭義のおまとめローンの問題に関して述べる。

2 おまとめローンの問題点

(1)利息制限法に基づく元本充当計算の機会の喪失
(a)  おまとめローンによって「まとめられる」既存債務の多くは、利息制限法を超過する貸金業者からの借入れであり、その一般的な融資実行までの事務処理は、以下のとおり整理できる。いずれの場合も、融資実行者は、融資金が約定利率のまま既存債務の返済に充てられていることを知り得る立場にあると言える。
ア)金融機関が行う融資の場合
融資実行に先立って貸金業者各社の融資実行日における約定残高を債務者本人に調査させ、融資実行と同時に、予め債務者から徴求しておいた出金伝票並びに債権者宛ての振込依頼書を利用し、融資金から返済を行うのが通常である。
イ)貸金業者が行う融資の場合
融資実行日における約定残高を調査させておくのは同じで、返済方法は、i)融資実行者の従業員が債務者に代わって振込む方法、ii) 融資実行者の従業員が債務者に同行して金融機関へ出向き、従業員の面前で債務者自身が振込む方法、iii)融資実行者の従業員が、債務者を各貸金業者の店舗前まで同行し、債務者自身による返済を見届ける方法等、さまざまなケースがある。
(b)  ところで、平成17年11月から平成18年1月にかけ、最高裁判所第一乃至第三小法廷は、貸金業規制法(以下、「法」という)43条のみなし弁済規定の解釈をめぐり、次々と貸金業者によるみなし弁済成立の主張を斥け、徹底して利息制限法による債務者の保護を貫く立場を示した。一連の最高裁判決を前提にする限り、みなし弁済の成立は困難を極めるものと指摘せざるを得ず、法43条は、もはや死文化したものと評価できよう。
金融業に携わる者にとって、実務に重大な影響を及ぼす一連の最高裁判決は、当然に知っていなければならない情報である。であるならば、融資実行者は、既存債務の返済金の内の相当額が、「払う必要のない利息」であることを認識しているのであり、さらには融資金の内の相当額が、「借りる必要のない資金」であることを承知で貸し付けていることとなる。
(c)  既存債務について利息制限法に基づく元本充当計算が行われた場合、債務は約定債務額よりも必ず減少する。取引期間が長期にわたる場合には、債務額が大幅に減少し、あるいは過払金が発生するケースも少なくない。
 おまとめローンは、かかる利息制限法による再計算の機会を奪い、「払う必要のない利息」の支払いを債務者に強要する結果となるだけでなく、約定利率のまま既存債務の返済を受けた貸金業者の下に、多額の不当な利益を残す結果にも繋がる。

以上のとおり、おまとめローンは利息制限法潜脱の温床となっているのである。

(2)過剰貸付の横行
(a)  融資実行者が既存債務の過払いを知りながら、「借りる必要のない資金」であることを承知で貸し付けているとの事実により、おまとめローンそれ自体が、過剰貸付の防止を目的とした金融庁事務ガイドライン3−2−1(2)「顧客に対し、必要とする以上の金額の借入れを勧誘したり、借入意欲をそそるような勧誘をしてはならないこと」に明確に抵触する貸付形態であると断言することができる。
(b)  また、事業資金のような貸し出された資金によってお金が産み出される貸付けではなく、生活資金等の貸し出しを主な目的とするサラ金の貸付けは、貸付金によってお金が産み出される事はない。したがって、返済原資は、もっぱら生活費を削って捻出されることになる。法13条は、「返済能力を超えると認められる貸付け」をしてはならないと規定するが、生活費を削って捻出できる返済原資の額は、一般家庭においてはせいぜい数万円であり、これを超える返済金を強いれば、たちまち自転車操業に陥らざるを得ないことは明白である。
 金銭を借り入れる者にとって、「借りること」それ自体は真の目的ではなく、「返済すること」こそが目的なのである。よって貸手は、返済できる範囲内で貸付を行わなければならない。そのためには、債務者の生活状況を把握し、月々の返済原資の範囲を客観的な資料の提示を求めて把握する必要があるのであり、このことこそ、過剰融資を禁止した法13条の趣旨である。
であれば法13条は、債務者の日常生活の範囲内での返済を前提としているものと理解すべきであり、第三者に支払義務を負わせることとなる「保証」や、日常生活の範囲を逸脱して財産の換価処分を求めることとなる「担保」は、法13条が規定する「返済能力」に含むべきではない。
(c)  さらに、そもそも既存債務の一本化が必要な債務者は、既に自身の返済能力を超える負債を負った破綻あるいは破綻寸前の状態にあることが一般的である。このような状況の下、おまとめローンによる一本化は問題の先送りに過ぎない。
おまとめローンによって、金利や月々の返済額が低下したとしても、その金利水準は少なくとも10%程度に設定されており、既に破綻あるいは破綻寸前の状態にあった債務者にとっては、おまとめローンによる融資金(数百万円に上ることが通常である)に対する利息負担すら困難なケースが多い。結局、おまとめローンによる融資金を返済するため、おまとめローンによって完済した既存借入先から再び借入れを起こすケースが後を絶たないのである。
(d) 以上、(a) 乃至(c) によれば、おまとめローンが債務者の「返済能力を超えると認められる貸付け」に該当することは明らかであり、おまとめローンが過剰貸付に該当することは歴然である。
(3)保証人被害・不動産担保ローン被害の原因
おまとめローンでは、保証人を求められたり、債務者・保証人の所有不動産に対する担保設定を求められたりするケースが多い。既述のとおり、おまとめローン需要者は、既に破綻あるいは破綻寸前の状態にあり、おまとめローンが実行されたとしても、近い将来、再び返済に行き詰まる蓋然性が極めて高い。
であれば、おまとめローンの融資実行者は、債務者の返済能力をもとより当てにはしておらず、保証人や担保不動産からの返済を目論んでいることは、容易に想像し得る。かつて商工ローンが社会問題化した折、「債務者は数年で倒産する。最初から債務者の返済能力は当てにしていない。資力のある保証人をつけさせ、保証人から回収することが目的」という融資実態が多方面からの非難を受けたことは記憶に新しいが、おまとめローンでは、かつての商工ローン問題とまったく同様の融資が横行しているのである。

3 おまとめローンの違法性

おまとめローンの違法性が争われた裁判例は少ないが、以下のような法理論により、おまとめローンの違法性を指摘することができる。

(1)公序良俗違反
この点について最近の判例は、不動産担保が設定されていない事案ではあるが、(a) 月収約16万円の債務者に対し約350万円を年利28%で貸し付ける行為は、過剰貸付に該当すること、(b) 多重債務者に対して、利息制限法による引き直しの説明をせずに債務一本化をなすことは、借主の無知に付け込み、自らのみが債権者となり、高利の利息から多額の利益を得ようとするもので違法性が強度であること、(c) 「無保証人」等の虚偽の広告は違法であること、の三点を根拠とし、債務一本化を目的とする本件貸付けを強度の違法性故に公序良俗に反し無効であると判示している(名古屋地判平成17年5月24日消費者法ニュース64号208頁)。
本判決は、債務一本化それ自体が公序良俗に反するとまでは言えないものの、債務一本化に、(a) 過剰貸付、(b) 虚偽広告、のふたつの要素が加味されることで強度の違法性を帯び、結果として公序良俗に反し契約が無効であるとの結論を示す。
ところで、前掲2(2)で指摘したとおり、不動産を担保に取るおまとめローンは、それが法13条の規定する債務者の「返済能力」を逸脱した貸付である点で、過剰貸付に該当する。このことと本判決での分析を比較検討すると、多くのケースでおまとめローンは公序良俗違反に該当するものと評価できよう。
(2)錯誤
また、利息制限法に違反する既存債務は全額の支払義務がないのにもかかわらず、全額の支払義務があると思っておまとめローンを受けた債務者には、動機の錯誤が存在する。
一般に債務者は、既存債務全額の支払義務がないことを予め知っていれば、おまとめローンを申し込んだり、無担保融資を敢えて担保付き融資に変更したりすることはないのであるから、この動機の錯誤は要素の錯誤に該当する。
ところで、前掲2(1)(a) で指摘したとおり、融資実行者は、融資金が約定利率のまま既存債務の返済に充てられていることを知り得る立場にあるのだから、債務者の動機は表示されているものと評価でき、債務者による錯誤無効の主張も可能と評価できる。

4 アメリカにおける規制

 アメリカでは、低所得者・多重債務者に対して債務を一本化する際に住宅を担保にとる貸付において、消費者の理解不足に乗じて借換・一本化を勧誘し、その結果借主が最終的に住宅を失うことが多いことに着目し、一定金利以上の住宅担保貸付に対して、連邦法(住宅所得者とその融資枠を保護する法律)(HOEPA(Home Ownership and Equity Protection Act))により、下記のような規制をしている。各州法においても、同連邦と同様又はさらに強化した規制が設けられている。

(1)バルーンペイントメントの禁止
5年未満の期間において、月々の支払額を金利相当額のみ払うことにより低額にして、最後の支払いで元本をまとめて支払うなど極めて高額な支払いをする方法(バルーンペイントメント)の禁止
(2)ネガティブ・アモータイゼーションの禁止
月々の返済額が、元本はもちろんのこと、月々の金利相当額にも満たなく残債務(残元本と金利相当額の支払残額)が増加していく支払い方式を禁止する。
(3)貸付に際して、消費者の返済能力を考慮することの義務化
借主の支払い能力に関係なく担保物件に基づき消費者にローンを提供することの禁止
(例として、ノースカロライナ州では、貸付契約に際して消費者の返済能力を考慮し、また収入の50%を超えない範囲での返済計画を示さなければならないとされている)
(4)(3)に関する違反行為推定規定
貸主が借主の支払い能力を文書で証明しない限り貸主の違反行為が推定される。
(5)期限前の弁済に対するペナルティの規制
(6)合理的でないローンの借換の禁止
借換が債務者にとって最善の利益でなければ短期間のうちにたびたび借換をすることは禁止し、借換の度に高額な手数料を取る実態に着目した規定を置いている。
(7)開示義務
債務を履行しないと住宅を失うことになる旨を開示すること、金利その他の支払い義務について開示することを義務づけている。
(8)その他
債務者がローンについてのカウンセリングを受けたことを貸主が立証しないとローンを提供することができない(ノースカロライナ州)。誤解させるような広告の禁止(マサチューセッツ州)。非良心的な金利、不相当な手数料などの禁止(マサチューセッツ州)。

以上のように、アメリカにおいては、住宅担保貸付等に関し、過剰融資を規制するための実効性のある措置が講じられている。なお、こうした規制がありながらもアメリカにおける破産件数が我が国の10倍に及んでいる。しかしながら、このような規制の存在しない我が国にとっては極めて示唆に富むものである。

5 求められる法改正

(1)過剰融資の規制
おまとめローンが蔓延した背景には、貸金業規制法13条が定める過剰貸付禁止規定の実効性が極めて乏しいという現実が存在する。このことは、同条違反行為が取締法規違反にすぎず、直ちに民事効を生じるものではないとの理由で、債務者側の主張を排斥する裁判例が圧倒的多数である現実が物語る。
過剰貸付を行った貸金業者の責任を肯定した判例は、過剰貸付をした業者が債権全額の回収を図るのは信義則から容認できず権利濫用であると指摘した数例にすぎない(釧路簡判平成6年3月16日判例タイムズ842号、札幌簡判平成7年3月17日判例時報1555号)。
しかしながら、先進諸国では、有担保融資による債務の一本化により、借主が最終的に返済を滞って住宅を失うことが多い実態に鑑み、明確な基準により過剰融資を規制している例が見られる。
本来、分割弁済による債務の完済を想定した融資であれば、自宅等の担保は「返済能力」を補完することにはならない。そうすると、貸金業規制法13条の趣旨は、おまとめローンの場合であっても貫徹されるべきである。
しかしながら、これまで、訓示規定的な位置づけがなされてきた同条の規制だけでは実効性が極めて乏しいことは否めない。
そこで、次のような措置を早急に立法化する必要がなる。
(a) 融資限度額の規制
 収入、職業、家族構成、他の債務、その他の状況などから、利用者に応じて一定の融資限度額(不動産を換価することなく、収入による返済可能額を基準に算出された限度額)を定めるとともに、実効性を確保するために、これを効力規定として位置づける必要がある。なお、この具体的な限度額に関しては、早急に研究を進める必要がある。
(b) 日本版バルーンペイントメントの禁止
 我が国の貸金業界では、高額な融資や商工ローンなどにおいて、月々の支払額は利息のみ(若干の元本が含まれる場合もある)を弁済し、最終支払いで元本総額を返済するという方式が多く行われている。しかしながら、本来、法的救済が必要な状態に至った者が、その段階でおまとめローンを利用することにより、救済がされることなく自宅を担保に取られてますます窮地に追い込まれる一因には、実態はこうした融資形態にもかかわらず、「とりあえず支払いが楽になる」と錯誤に陥っている実情がある。
 住宅ローンにおいてさえ、「ステップ償還」、「ゆとり償還」などにより返済額が変動し、支払いが困難となった債務者が急増したという我が国の歴史的事実をも踏まえ、返済期間中に返済額が一定程度(率については早急に検討する必要がある)増加する場合や、最終支払いで多額の残元本を支払わなければならないという融資形態を禁止する必要がある。
(c)  開示義務
 不動産を担保に取って融資をする場合、貸金業者は「返済を怠った場合には不動産を換価して債権を回収する」という意思が明確であるにもかかわらず、利用者は「とりあえず返済が楽になれば、不動産を担保に取られても支払いを続けることができるであろう」という意識を持ちがちであり、既にその時点で認識に大きなズレが生じている。
 そこで、融資に際し不動産を担保を取る場合には、貸金業者に対し、当該貸金業者の融資を完済した者の比率、延滞等により不動産を処分した者の比率を示すことを義務付けるとともに、誰しも、失業、疾病、経済情勢の変動等により延滞が生じることがあること、その場合には不動産の換価が必要となることがあること、換価後の生活について自ら予測しておくことについて具体的な説明義務を課し、利用者がこれらを具体的に認識したことを弁護士、司法書士又は公証人の面前で宣誓したことを供述した記録を残し、担保設定登記の添付書類とすることなどの措置を講ずる必要がある。
(d) 民事効並びに刑事罰の立法化
 前各項に指摘した過剰与信規制の実効性を担保するためには、過剰与信をした業者が司法の場で契約責任を負担させられる法整備が不可欠であり、そのためにも、違反行為に対する民事効の立法化が必要となる。
 加えて、確信犯的に過剰与信を繰り返す貸金業者は市場からの撤退を強いられるべきであり、そのための刑事罰の立法化も必要である。
(2)利息制限法に関する説明義務
また、貸金業者に対する様々な規制は、貸金業者の適正な活動を促進して、最終的には資金需要者等の利益の保護を図るとともに、国民経済の適切な運営に資することを目的とされているところ(貸金業規制法1条)、貸金業者が、他の利息制限法を超過する利息等が付された債務を精算する目的で融資を行う場合には、上記の目的に鑑み、貸金業者に対し、当該債務を利息制限法に基づいて元本充当計算ができることの説明を義務付ける必要がある。なぜなら、この場合、利用者は、よもや自らの債務が約定残高よりも減少することなど想定していないのが通常であるから、貸金業者に教示義務を貸すことにより当事者の公平を図ることができるからである。また、当該教示により、債務のおまとめに最低限必要な資金のみが融資されることになり、貸金業制度の目的にも適うこととなるのである。
 上記の義務づけを実効性あるものにするための方策として、既存債務の借入先、並びに返済日及び返済額を、貸金業規制法17条書面の記載事項とすべきである。

 以上に加え、先進諸国の過剰融資規制を研究して必要な措置を講じ、これらを実効性あるものとして効力規定として位置づけるための法改正が必要である。

以 上