アイフル被害対策全国会議

「おまとめローン」を促進する
内閣府令案に反対する意見書

2010年4月28日

アイフル被害対策全国会議
代 表 弁護士 河野  聡
事務局 弁護士 辰巳 裕規
神戸市中央区東川崎町1−3−3
神戸ハーバーランドセンタービル10階
神戸合同法律事務所内
TEL078-371-0171/Fax078-371-0175
URL:http://www.i-less.net

第1.意見の趣旨

1.2010年4月26日に金融庁が公表した改正貸金業法に関する内閣府令改正案のうち、「総量規制に抵触している者の借入残高を段階的に減らしていくための借換えの推進」(規則第10条の23第1項第1号の2)について反対する。

2.仮にかかる改正案を導入するのであれば、

(1)借入残債務について利息制限法充当再計算を前置し、その結果を教示すること

(2)その際、自社債務については利息制限法充当再計算を自主的に行い、法律上有効な残債務額を超えて借換を求めないこと、及び過払金が存する場合には自主的に返還すること

(3)保証や担保付き融資には適用しないこと

を最低限の要件として義務づけることを求める。

3.信用情報機関から得た信用情報を「おまとめローン」の勧誘に用いることが禁止される旨を再確認することを求める。

第2.意見の理由

1.はじめに

 アイフル被害対策全国会議では、消費者金融大手アイフルが主力商品としていた「おまとめ・不動産担保ローン」の問題に取り組んで来ました。アイフルにおいては、高齢者・障がい者の居住用不動産まで担保に取るといった被害が多発しましたが、この不動産担保ローンが、既に複数の貸金業者から多額の負債を有するに至った多重債務者をターゲットに「おまとめローン」として利用され、もとより借主・保証人の不動産を売却することにより債権を回収することを企図した貸付(日本版「略奪的貸付」)が社会問題化しました。当会議では、平成18年の改正貸金業法の制定にあたって、再三にわたり「おまとめローン」の問題点について意見を述べてきたところです(ホームページをご参照ください)。

2.「おまとめローン」の問題点

 「おまとめローン」は、複数の借入を一本化するとともに、毎月の支払金額や利率が軽減されることから一見借主の利益となるようにも思えます。しかしながら、「おまとめローン」の対象が高金利による貸付であることから、様々な問題を有しています。

(1)既に多重債務状態にあること

 「おまとめローン」を必要とする借主の多くは、既に複数の貸主より自己の返済能力を上回る多額の借金をしている場合がほとんどです。これらの借主に必要なことは「借換え」ではなく、早期に適切な法的債務整理を行い生活再建に着手することです。「総債務額」が減少しない「おまとめローン」では、多重債務状態が解消されないばかりか、問題解決の機会を奪いかねない点で大いに問題があります。

(2)利息制限法引き直しの機会が奪われること

 「おまとめローン」の対象とされる借入債務の多くは、これまで利息制限法を超過する「グレーゾーン金利」による約定利息によるものです。そしてこれらの債務は利息制限法充当再計算をすれば減少・消滅し、更には過払となる場合も存します。ところが現状の「おまとめローン」では利息制限法による充当再計算が行われずに、名目上の借入残高についてそのまま借換えをさせるものがほとんど全てです。これでは法律上返済しなければならない債務額は増加することとなりますし、利息制限法充当再計算の機会が奪われ、多重債務状態が悪化してしまいます。

(3)保証人や担保徴求の危険

 さらに「おまとめローン」を必要とする借主は、実際は返済能力が既に失われていることが多いことから、保証人や担保を徴求される場合があります。この場合は、もとより保証人や担保からの回収を目的とする貸付、いわゆる「略奪的貸付」が行われることとなります。

(4)信用情報の「流用」の問題

 なお、貸金業者が信用情報機関より取得した借入債務についての信用情報は本来過剰融資の禁止のために用いられるものです。ところが、複数の貸金業者より高額の債務を抱えるに至った借主は「おまとめローン」勧誘のターゲットとなることから、貸金業者が信用情報機関より獲得した信用情報から勧誘対象を抽出する手法が平成18年頃に報じられました。かかる行為が法令で禁止される信用情報の目的外利用の典型であることを再確認する必要があります。

3.内閣府令改正案の問題点

 今般の内閣府令改正案のうち、「総量規制に抵触している者の借入残高を段階的に減らしていくための借換えの推進」(規則第10条の23第1項第1号の2)とされている部分は、まさに「おまとめローン」を推進する内容となっています。その改正理由としては単に借入残高が変わらずに、毎月の返済額や利率が軽減することで、借主に新たな負担が生じず、残高を段階的に減らすことができることで借主の利益となるというもののようです。

 しかしながら、既に述べた通り、総量規制に抵触するほどの借入を行っている者に必要なことは、借換えよりも法的債務整理であり、まずは適切な相談窓口に誘導することが必要です。そしてそれは多重債務者対策本部を設置する政府の役割です。この役割を放棄して、安易に「借換え」に誘導する改正案には反対です。また、改正案では利息制限法充当再計算について一言も触れられていません。借換えの対象となる債務については、利息制限法充当再計算により法律上有効な債務額を明らかにしなければ、必要のない部分まで借入をさせることとなり、借主の債務残高を増やすこととなります。また、借主が利息制限法充当再計算により正しい債務額(あるいは過払金の有無)の認識を妨げることとなります。このような借換えは消費者契約法の「不実告知」「不利益事実不告知」に該当する不当勧誘となると解されます。また、「担保や保証にかかる要件」についても借換え後の条件が厳しくならないことが求められているようですが、これだけでは不動産担保ローン付き融資について貸金業者間で利率を下げながら借換を繰り返す「キャッチボール」事案が存在したように、保証人や担保不動産目的の略奪的融資の予防には不十分です。

 以上の理由により当会議は今般の上記改正案については強く反対をいたします。

 仮に上記改正案を実施するのであれば少なくとも

(1)利息制限法充当再計算を前置すること

(2)借換えの対象となる債務について利息制限法充当再計算を実施し、その結果を債務者に教示すること

(3)自社債務については自主的に利息制限法充当再計算を実施し、法律上有効な債務額以上の借換えをさせないとともに、過払金が存する場合には自主的に返還すること

(4)保証・担保付融資には適用しないこと

 を最低限の条件とすることを強く求めます。なお、今後「おまとめローン」勧誘が過熱化する懸念もあります。信用情報機関より得た信用情報の目的外利用が許されない旨を徹底する必要もあります。

以    上